美容皮フ科
Dermatology
美容皮フ科
Dermatology
ケミカルピーリングとは、皮膚に化学薬品を塗り、皮膚を剥がすことによって起こりうる現象や効果を利用して行う治療のことです。ケミカルピーリングは、主に欧米において美容目的で広く行われていましたが、近年、日本にも導入され多くの施設(エステティックサロン、医院、病院など)で行われるようになりました。しかし、それとともに腫れや炎症などの危害例の報告が多数よせられるようになりました。このような背景のなかで、日本皮膚科学会は、ケミカルピーリングを行う医師、当該関係者の教育、国民への周知が責務と判断し、安全なケミカルピーリングを行うためのガイドラインを2001年に作成し、2008年に3回目の改正を行いました。当院は、患者さんや医師の皆様から、しばしば寄せられる質問に対して、先述のガイドライン、皮膚科学会HPをもとにして作成しています。
1990年代になり、美容に関する情報や治療が日本でも広く普及しました。その中で以前より欧米で広く行われていた、ケミカルピーリングという方法が日本に導入され、多くの施設で行われるようになりました。しかし、それとともに国民生活センターの全国消費生活情報ネットワーク・システムには、腫れや炎症などの危害例の相談が多数寄せられるようになり、厚生省としても早急な対応が必要となり、2000年6月には厚生省健康政策局医事課より「ケミカルピーリングは業として行われれば医業に該当する」と明言されました。基本的理念として「ケミカルピーリングが、診療技術を十分に修得した皮膚科専門医ないしそれと同等の技術・知識を有する医師の十分な管理下に行われるべき行為である」と記載されています。
「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」には一般的に使用される薬剤例として次のような薬剤が挙げられています。
グリコール酸、サリチル酸(マクロゴール基剤、エタノール基剤)、トリクロロ酢酸(TCA)、その他として、乳酸、ベーカーゴードン液、フェノール
これらの薬品を疾患や状態により使用するのですが、薬品の濃度を変えたり、時には数種類の薬剤を組み合わせて使用します。日本人の肌にはグリコール酸が最もマイルドで比較的安全に使用できるので、多くの施設で使われています。しかし、患者さんの治療時の皮膚の状態でピーリングの深さは変わってきますので、担当者は常に注意をしながら行っています。
当院では現在サリチル酸(マクロゴール基剤)を使用したピーリングの施術が可能です。
尚、「そばかす」のような遺伝的な病気や、「肝斑」といった紫外線や女性ホルモンで悪化する病気に対しては、診断や治療は容易ではありません。また、「しみ」は、悪性度の高い皮膚癌との診断がまぎらわしい場合もあり、安易な自己診断は厳禁です。ご相談ください。
ケミカルピーリングは、皮膚をはがすことで生じる効果を利用した治療法です。その深さをケミカルピーリングガイドラインでは4段階に分けています(資料1、2)。厚く剥がすことで、例えば前癌病変などの病変を除去することが可能です。また、薄く剥がすこと(角層除去)により、皮膚のいろいろな再生機構が働き、新しい皮膚の再生が期待できます。
にきび
にきびは、皮脂が毛穴に貯留することでにきびのもと(角栓)が形成されることから始まります。炎症が生じますと、赤く痛みを持ったにきびや膿をもったにきびとなります。浅い深さのピーリングにより毛穴を閉塞させている角質や面皰は排出され、つまった毛穴は開通されますので、にきびは改善され、また、にきびのできにくい皮膚の状態になります。また膿をもった炎症性にきびの場合にも、浅いケミカルピーリングにより排膿が促され治癒が促進されます。
しみ
ケミカルピーリングにより表皮の生まれ変わり(ターンオーバー)が促進され、表皮内に貯留していたメラニン色素が上行して角質とともに脱落し、また、表面に固着していた角質も均等に剥離されるため、くすみも改善されます。用いる薬品によっては、薬品が直接メラニン色素に働きかけ、しみを薄くすることも言われています。しかし、これらの変化は、顕微鏡レベルでは証明されていますが、実際に肉眼で確認することができるためには、根気よく治療を続け、また治療中の遮光などの努力が必要です。
疾患、疾患の重症度、使用薬剤、薬剤濃度、によって異なります。ケミカルピーリングに対する皮膚の反応は、個人個人(年齢などの違い)において、また同じ人でも治療時の皮膚の状態や行う季節によって異なるので効果の発現時期も様々です。すぐに治療効果が見られない場合でも、治療目標の達成の為には根気よく続けることが必要です。
グリコール酸を用いた「にきび」に対するケミカルピーリングでは、治療直後から、毛穴からの皮脂の分泌や、膿をもったにきびが自然に破れ、膿が出やすい状態になります。治療開始時は基本的に約2週間に1回の割合で治療するのが効果的です。続けていると新しいにきびが出てくるまでの期間は長くなり、徐々に治療期間を空けていくのが良いでしょう。はじめは治療効果が見られなくても、治療を重ねていくうちに急に改善傾向を認めることをしばしば経験します。例えば、中等度のにきびで平均6回、重症のにきびで平均10回の治療後に、急速に新しく出る割合が減少したり、にきびのために赤くなっている皮膚が改善したりといったことも経験されています。
また、「しみ」に対しては、浅いケミカルピーリングでは即効性はありません。通常、2、3回の治療で効果が出ることは少なく、数ヶ月から年単位の期間がかかることが多く、他療法との併用が効果的です。「くすみ」に対しては、グリコール酸を用いた場合、約4~5回程度で効果が出てきます。
ただし、いずれの場合も効果には個人差があります。
ケミカルピーリングの後は角質層が剥がれ、紫外線が皮膚に浸透しやすいため、サンスクリーン剤による遮光が毎日必要です。また、治療中の病気がある人や妊娠中、授乳中の人、傷あとが残りやすい人などは、ケミカルピーリング治療を受ける前に、相談してみてください。
角質が痛んでいるとケミカルピーリングが必要以上に深くなるので、ケミカルピーリング前日の顔剃り、パック、スクラブ洗顔は避けてください。また1ヶ月以内にほかの治療(ケミカルピーリング、レーザー、電気・ワックス脱毛など)を受けている場合にもピーリングを行えないことがありますので、治療前に担当者にご相談ください。また顔に湿疹がある場合もピーリングが深くなるため施行できない場合があります。口唇ヘルペスや伝染性膿痂疹(とびひ)がある場合にも治癒するまでは行えませんので、治療終了後に行ってください。
ケミカルピーリング中は、ほとんどの場合ぴりぴりとした刺激感があります。また、ケミカルピーリング後は皮膚が赤くなったり、かさかさしたりしますが、たいていは2、3日で治まります。いつもより多めに保湿剤を使用してください。そのほか、水ぶくれができる、浅い傷ができる、小さいかさぶたができることもありますが、その状態が続くようであれば、施術医にご相談ください。
角質層は紫外線から皮膚を守る働きを担っています。ケミカルピーリングでは角質層をはがすことにより紫外線が皮膚を通過しやすい状態となっています。紫外線は、しみや皮膚老化の原因となりますので、毎日必ずサンスクリーン剤(紫外線散乱剤を使用した低刺激性・低アレルギー性のSPF18、PA++程度のもの)による遮光に留意してください。また角質層は皮膚から水分が失われるのを防ぐ働きもあります。ケミカルピーリング後は角質が脱落し保湿力が低下しますので、自分の肌にあった保湿剤・乳液等で十分補ってください。
まれに、今まで使用していた化粧品が肌に合わなくなることがありますが、その場合は化粧品の使用を一時中断してください。
にきび
抗菌薬の内服とケミカルピーリングの併用で治療期間の短縮が図れます。
しみ(老人性色素斑、肝斑、雀卵斑、炎症後色素沈着など)
美白効果があるとされている外用剤としてレチノイン酸やハイドロキノン、レチノール、各種ビタミンC製品といった美白剤を併用することで効果が期待できます。しかし、ケミカルピーリング直後の角層を除去した皮膚に用いるのは、時に思わぬ副作用(赤く腫れる、かぶれ、ただれる、など)が生じます。担当医師の指示に従ってください。
現時点では、保険診療外の治療となります。当院では全顔のピーリングで1回¥10000となっています。
エステティックサロンでは、肌表面の状態を整える、化粧のりを良くする、肌に透明感を持たせる、肌をしっとりと整える等の目的でケミカルピーリングが行われています。しかし、疾病の治療を目的としたケミカルピーリングは法律で禁止されています。また安全性が最優先されるために、TCA(トリクロール酢酸)、フェノールの使用は禁止されています。また、グリコール酸については「pH3.0以上、濃度10%以下」であればエステティックサロンでも用いて良いのではないかという厚生労働省の研究班の報告があります。いずれにしても、未だ法的に決着がついていない点もありますので、あらかじめ当院含め医療機関に相談されることをお薦めします。